2013-12-22

「ブレーキは105以上にしとけ」とは?

基本的な立ち位置はテクトロ擁護派の私が、ちょっとデュアルピボットキャリパーブレーキの事を考えてみました。

「停まらない」
「剛性がない」
「シューが良くない」
「事故りたくなかったらシマノの105以上に交換しろ」

テクトロ製が酷評されすぎているのは何故でしょう?

一方で
「シューさえ変えれば問題ない」

と評価が2分するのも気になります。

海外のユーザー評価と比較しても、シマノ>テクトロという評価は変わりませんが、特に日本のほうがテクトロ製への評価は厳しい傾向です。どうしてなんでしょうか?

鍛造品と鋳造品の違いを指摘する意見もあるようですが、テクトロの型番のR700番台、R500番台は鍛造アームです。エントリークラスのR300番台には低コストな溶融鍛造工法のアームを採用した製品も確認できます。



とかく酷評されるテクトロですが、きっちりとジョイントにガタがなく、スムーズに動作するように調整して、シューさえきちんとしたものにすればしっかり制動できると思っています。フルブレーキングでアームがビビる、撓むみたいなインプレもありますが、アームの材質だとはちょっと考えにくいです。

実際にテクトロのサイドプルブレーキをいくつか入手していますが、ピボットの動きが渋くなっていたり、逆にアームの動きが軽いけど実はピボットの緩みが原因だったという個体を見てきました。おそらく、使用中または新品時の組付け精度の問題でジョイントが緩んだり逆に締まったり、ということが起こりやすい構造なのではないかと想像します。

「Tektroでもパッドさえ変えれば全く問題ないし、フルブレーキングでロックはもちろんジャックナイフだってできる」

というように、評価がまるっきり2極化する理由としても整合します。…と、私は調整の問題だろうと今まで考えていました。が、問題は簡単なことではなく、使い続けている間にベストなセッテイングをいかに維持できるか、また維持するための確かな機構が備わっているか?という部分のようです。

デュアルピボットキャリパーに関して、テクトロ叩きと共に「ブレーキは105以上にしとけ」と、よく見聞きします。シマノ105以上のブレーキとそれ以外の違いは何でしょう?

ジョイントに関しては、1986年登場のシングルピボット時代のBR-1050を含め、デュアルピボット化されたBR-1055から最新のBR-5700に至るまでボールベアリングが採用されています。一方Tiagraは最新のBR-4600でもブッシュ軸受け式です。テクトロも基本ブッシュ軸受け式です。

初めてBR-1055を分解してボールベアリングがポロポロ落ちてきた時、正直「なんとまあ、オーバーエンジニアリングな…」と思ってしまいました。出始めの頃、しかもバブル期のデュアルピボットなので、その後どこかの世代で廃止されたと想像しましたが、違っていました。テクトロのジョイントの不調が評価を落としているのはボールベアリングの有無ではないかとも思えてきます。

ボールベアリングが使っている間の軸の緩み、がたつきを防ぎつつ、スムーズな動きを確保しているのでしょう。まさか樹脂ブッシュの剛性が問題だったりして…。

さらに言えば定評の105ですら表面が平滑なワッシャーのために使っている間に取付部が滑って片効きになってしまうことがあるらしく、デュラエースやアル テグラに採用されているギザワッシャーや、滑り止めの効果が高いサンドブラスト処理のワッシャーを流用して改善するチューンアップ手段が知られているよう です。

ストッピングパワーの発揮に最適なレバー比、コントロール性に優れたリニアな制動曲線等はわかりやすいですが、結局のところデュアルピボットキャリパーブレーキは緩み、がたつき、取付部の滑りとの戦いなのかもしれません。

テクトロがボールベアリングを採用したところで、9000系では1960年代のパテントのデュアルピボットキャリパーからさらに機構面でのブレイクスルーがあったらしく、シマノ>テクトロというのは不変のようです。

これらを踏まえて、よく構造とその弱点を理解して調整・メンテナンスをすればテクトロ製キャリパーとうまくつきあっていけると思うのです。

テクトロのナット軸組み替え/全バラオーバーホールはやめた方がいい?

旧式のナット留めブレーキをデュアルピボット化する際の手法として、テクトロ800A等の一般車向けブレーキのナット軸を流用して組み替える方法を紹介していました。実際に自分ではやっていないまま情報が広まってしまいましたが、先日Tektro R510のオーバーホールをした時に(その直後盗難に遭いました…)Tektroキャリパーは「メインの軸を抜き取る毎にネジ山を破壊してしまう危険が高い」という問題を抱えていることを再認識するに至り、注意喚起も含めて記事にしておきます。全バラでのオーバーホールを含め、ナット軸組み替えもあまりオススメではないかもしれません。

どういうことかというと、この取り付け軸は使用中に緩まないように回り留めのイモねじで固定されているのですが、イモねじの先端がねじ山を潰して食い込ませる構造になっていて、製造時に軸のねじ山が潰されたが最後、軸を抜き取る際には潰れたねじ山に削られてアルミの切りくずを出してしまう、というものです。

元ネタとなったサイト「The Headbadge」、カートさんの記事
"Converting a Tektro R556 front brake to nutted mounting / Tektro dual-pivot disassembly"
問題はこちらでも指摘されています。ちなみに最初にバネを取り外されていますが、この手順は危険なので、13mmのナットを外してからバネを取り外すほうが良いです。

R510では抜き取ったネジ山が、取り付けの際に再びアルミの雌ねじを傷めないように潰れた部分をヤスリで削って対処しましたが、あまり気持ちの良いものではありませんでした。

分解用のテクトロR350
テクトロのR350
では写真解説です。ブラインドナット目当てに入手した、テクトロR350さんにご登場いただきます。
この個体は入手時には主軸ジョイントが緩んでガタが出ていたり、一方の第2ピボットは動きが渋くなっていました。おそらく使用中の緩みだと想像します。

ピボット軸のネジ山つぶれ
第2軸分解
第2ピボット軸を抜き取ったところです。潰れたネジ山のせいで削り屑が出ています。CアームとYアームをつなぐ間のパーツの、Yアーム取付部側ピボットです…。


回りどめイモねじ
ネジ山破壊の元凶、回りどめのイモねじ
主軸の回り留めに使われているイモねじです。先端が軸のスレッド部に食い込んで固定する仕組みです。

主軸ネジ山
主軸ネジ山。この個体はネジ山潰れが軽微
幸い主軸からは削り粉は出てきませんでした。この個体の主軸への食い込みは最小限にとどまっていたものの、主軸側の緩みの原因だったのかもしれません。

個体差もありますが、軸を抜き取るまではイモネジの食い込み具合を知る術がありませんので、結局のところ軸組み替えにしても、オーバーホールにしても、軸を抜き取らないほうが無難なようです。

テクトロ擁護派の私ですが、デュアルピボットキャリパーブレーキは、各ジョイントが緩みやガタが無い状態でスムーズに動くという状態をいかに維持するかに掛かっているのだと思います。このあたりは次の記事にて。

2013-12-04

BRIDGESTONE RADAC 5台目はオールクロモリのRR1R。

ハイ。人生5台目のレイダックが私のもとにやって来ました。モデル名はRR1R、オールクロモリです。しかも塗装のツヤが新車当時の面影を今に留める状態、奇跡の1台とあって喜びもひとしお。いやー今日はイイ日です。 5台目と言っても、先日の盗難で現有は3台ですけどね。

RADAC歴はこんな感じです。

1台目 … 92年製 型式失念…。 アルミスチールハイブリッド 新車購入 (実家に置きっぱなしにしてたら処分されたという、よくあるパターン) (サカエのクランク、シマノバイオペースチェーンリング、サンツアーEDGEが中心の混成仕様でした)

〜この間、約15年の空白期間〜

2台目 … 90年製 RF6-53 アルミスチールハイブリッド (盗難) コマンドシフター前期タイプ。
3台目 … RR1R-530 オールクロモリ、フレームセットのみ (型番は推定)
4台目 … RRNA-530 オールアルミ最終型、1055組み。
5台目 … RR1R-530 オールクロモリ

そのほかにも私はレイダックとは妙な縁があります。

若い頃(今でも若いよ)テレビコマーシャル制作だとか番組の挿入アニメーションを作ったりするテレビのお仕事をしてましたが、スポーツ用品メーカーのCMのCG制作をやった事があります。ゴルフのカーボンシャフトという、形状は単純でもその分表現の制約が大きい題材でした。

時は流れ、そんな仕事の事もすっかり忘れ、私も商売替えを経てまた再びRADACに乗り始めたある日。買った自転車雑誌に、聞き憶えのあるメーカー名が出てるではありませんか。何でも、レイダックの開発者様が入社されて「しなりをスピードに変える」という、まんまレイダックなコンセプトの自転車が発売されたということです。

しなる、たわむという特性は、アルミスチールハイブリッドに強く出ているような気がします。というわけでまた1台アルミスチールハイブリッドが欲しくなってきました…。